2007年10月03日

第11号(9月22日配信分)

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  ★★ 民法が得意になる!過去問サクサク○×ドリル<第11号> ★★  

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民法総則 <無効・取消し>

【問題】

無効及び取消しに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 無効な法律行為であっても、当事者が無効であることを知りながら追認し
  た場合は、常に行為の時にさかのぼって効力を生じる。

2 取り消し得る法律行為は、制限行為能力者又は瑕疵ある意思表示をした者
  に限り、これを取り消すことができる。

3 取り消し得る法律行為を取り消した場合は、常にその取消しの時から将来
  に向かって効力を失う。

4 取消権は、追認することができる時から5年間これを行わなければ消滅す
  る。

5 取り消し得る法律行為を追認した場合は、その追認の時から将来に向かっ
  て有効となる。


行政書士 平成2年第27問 改題)


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今回は行政書士試験の過去問からの出題です。

「無効・取消し」についての知識を問う問題です。

条文(民法119条〜126条)をしっかりと把握できているかどうかが

ポイントになります。

なお、平成12年に民法が改正されたことに伴い、問題文の文言を

若干修正させていただきました。


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【解答・解説】

1× 無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない(民法119条本文)。
   ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、
   新たな行為をしたものとみなされる(同条但書)。つまり、「行為時」
   にさかのぼって効力を生じるわけではなく、「追認時」から新たな行為
   として効力を生じるのである。

2× 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、「制限行為能力
   者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者」に限り、
   取り消すことができる(民法120条1項)。
   詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、「瑕疵ある意思表
   示をした者又はその代理人若しくは承継人」に限り、取り消すことがで
   きる(同条2項)。
   つまり、制限行為能力者、瑕疵ある意思表示をした者だけでなく、これ
   らの代理人(法定代理人や取消権を授権された任意代理人)や承継人
   (包括承継人や契約上の地位の譲渡を受けた特定承継人)も、取り消す
   ことができる。

3× 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされる(民法121
   条本文)。つまり、「取消時」からではなく、「行為時」に遡って当初
   から効力を生じていなかったことになるのである。

4○ 取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時
   効によって消滅する(民法126条前段)。行為の時から20年を経過した
   ときも、同様である(同条後段)。
   なお、追認をすることができる時とは、取消しの原因となっていた状況
   が消滅した時である。
   (民法124条1項参照:
     未成年者
      →成年に達した時、
     成年被後見人・被保佐人・民法17条1項の審判を受けた被補助人
      →審判が取り消された時
     詐欺又は強迫によって意思表示をした者
      →詐欺があったことを知り又は強迫を脱した時)

5× 取り消すことができる行為は、追認されない間であっても、有効な行為
   である。取り消すことができる余地があるにすぎない。よって、追認の
   時から将来に向かって有効となるとする本肢は誤りである。
   なお、民法は、取り消すことができる行為は、取消権者が追認したとき
   は、以後、取り消すことができないとしている(民法122条本文、120条)。
   つまり、追認をすることにより、取り消すことができる余地もなくなり、
   行為は確定的に有効となるのである。
   この意味で、「追認=取消権の放棄」と言われる。


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お疲れ様でした。

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2007年09月27日

第10号(9月15日配信分)

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  ★★ 民法が得意になる!過去問サクサク○×ドリル<第10号> ★★  

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民法総則 <代理>

【問題】

Aは、Bの代理人として、Bの所有地をCに売却した。この場合、民法の規定
及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

1 Aが未成年者であって、法定代理人の同意を得ないで売買契約を締結した
  場合、Bは、Aに代理権を与えていても、その売買契約を取り消すことが
  できる。

2 BがAに抵当権設定の代理権しか与えていなかったにもかかわらず、Aが
  売買契約を締結した場合、Bは、Cが善意無過失であっても、その売買契
  約を取り消すことができる。

3 Aに代理権がないにもかかわらず、AがBの代理人と偽って売買契約を締
  結した場合、Bの追認により契約は有効となるが、その追認はCに対して
  直接行うことを要し、Aに対して行ったときは、Cがその事実を知ったと
  しても、契約の効力を生じない。

4 Aが代理権を与えられた後売買契約締結前に破産手続開始の決定を受ける
  と、Aの代理権は消滅するが、Aの代理権が消滅しても、Cが善意無過失
  であれば、その売買契約は有効である。


宅建 平成6年第4問 改題)


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今回は宅建の過去問からの出題です。

「表見代理」についての知識を問う問題です。

表見代理の成立要件をしっかりと把握できているかどうかがポイント

になります。

なお、肢4については、平成17年に破産法の改正があったことに伴い、

若干問題文を変更させていただきました。


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【解答・解説】

1× 代理人は、行為能力者であることを要しない(民法102条)。そこで、
   未成年者が法定代理人の同意を得ずに代理行為を行った場合であっても、
   これを理由として本人は当該行為を取り消すことはできない(民法5条
   1項2項、120条1項参照)。
   したがって、未成年者である代理人Aは、法定代理人の同意を得ずに売
   買契約を締結しているが、本人Bは、これを理由として売買契約を取り
   消すことはできない。

2× 本問のAは、抵当権設定の代理権しか与えられていないにもかかわらず、
   その権限を超えて売買契約を締結しているため、Aの代理行為は、無権
   代理行為に当たる。無権代理行為について、本人は追認を拒絶すること
   はできるが(民法113条2項)、当該行為を取り消すことはできない
   (民法115条参照)。したがって、Bは売買契約を「取り消すことがで
   きる」とする本肢は誤りとなる。
   なお、無権代理行為については、相手方は、表見代理として本人に効果
   が帰属することを主張できる場合があるため、この点を検討する。
   代理人が権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があ
   ると信ずべき「正当な理由があるとき」は、本人は、代理人が第三者と
   の間でした行為について「責任を負う」(表見代理:民法110条・109条
   本文)。
   「正当な理由があるとき」とは、代理人に権限がないことについて「善
   意無過失」であった場合をいう(最判昭44.6.24参照)。
   「責任を負う」とは、代理権の範囲内の行為であった場合と同様の効果
   を本人に帰属させることを意味する。
   以上より、下記3つの要件を満たした場合には、無権代理行為であって
   も、本人に効果が及ぶことになる(権限外の行為の表見代理)。
    (1)代理人が一定の代理権を有すること(判例・通説は、原則として、
      私法上の法律行為の代理権であることを要するとする
      [最判昭46.6.3、最判昭35.2.19参照])。
    (2)代理人が(1)の代理権の範囲を超えて代理行為を行ったこと。
    (3)第三者(=相手方)が代理人に権限がないことについて「善意無
      過失」であったこと。
   本問について見てみると、Aは抵当権設定の代理権を与えられており、
   その権限を超えて売買契約を締結しているため、(1)、(2)の要件は満
   たしている。
   また、相手方Cは善意無過失であるため、(3)の要件も満たしている。
   よって、AC間の売買契約の効果はBに帰属することになる。

3× 追認は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができ
   ない(民法113条2項本文)。ただし、相手方がその事実を知ったとき
   は、この限りでない(同条2項但書)。つまり、代理人に対して追認を
   した場合であっても、相手方がその事実を知った場合には、追認の効果
   を相手方に対抗することができるということである。
   よって、BはAに対して追認を行ったとしても、Cがその事実を知った
   場合には、Cに追認の効果(本問の場合、売買契約が契約時に遡って有
   効となること[民法116条本文])を対抗することができる。

4○ 代理権は、代理人が破産手続開始の決定を受けた場合には、消滅する
   (民法111条1項2号)。よって、本問Aの代理権は、破産手続開始決
   定の時点において消滅する。この結果、売買契約は、代理権消滅後に行
   われたことになり、無権代理行為となる。
   ここで、民法は次のように規定している。
   代理権の消滅は、「善意」の第三者に対抗することができない。ただし、
   第三者が「過失」によってその事実を知らなかったときは、この限りで
   ない(表権代理:民法112条)。つまり、代理権が消滅した後であって
   も、代理権の消滅について「善意無過失」の第三者には、その事実を対
   抗することができず、結果として、本人に代理行為の効果が帰属すると
   いうことである。
   以上より、下記3つの要件を満たした場合には、無権代理行為であって
   も、本人に効果が及ぶことになる(代理権消滅後の表見代理)。
    (1)代理人が以前有していた代理権が消滅したこと。
    (2)代理人が(1)の代理権の範囲内で代理行為を行ったこと。
      (代理権がそのまま存続していると信じる第三者を保護する規定
       であることから当然に導かれる要件である。もっとも、この範
       囲を超えた代理行為についても、民法112条・110条の重畳適用
       によって有効とするのが判例である[大判昭19.12.22参照])。
    (3)第三者(=相手方)が代理権の消滅について「善意無過失」であっ
      たこと。
   本問について見てみると、Aは破産手続開始決定を受けるまでは売買契
   約の代理権を有しており、その範囲内の行為(売買契約)をしているわ
   けであるから、(1)、(2)の要件は満たしている。
   また、相手方Cは善意無過失であるため、(3)の要件も満たしている。
   よって、AC間の売買契約の効果はBに帰属することになる(売買契約
   は有効となる)。


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2007年09月23日

第9号(9月12日配信分)

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  ★★ 民法が得意になる!過去問サクサク○×ドリル<第9号> ★★  

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民法総則 <代理>

【問題】

Aが、実父Bを代理する権限がないのに、Bの代理人と称してCから金員を借
り受けた。この事例に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照
らして正しいもの(2つ)はどれか。なお、Cには、Aに代理権がないことを
知らなかったことに過失があるものとする。

ア Bが死亡し、AがBを単独で相続した場合、Cは、Aに対し、貸金の返還
  を請求することができる。

イ Aが死亡し、BがAを単独で相続した場合、Cは、Bに対し、貸金の返還
  を請求することができる。

ウ Bが死亡し、AがBの子Dと共にBを相続した場合、Dが無権代理行為の
  追認を拒絶しているとしても、Cは、Aに対し、Aの相続分の限度で貸金
  の返還を請求することができる。

エ Bが死亡し、AがBの子Dと共にBを相続した場合、Dが無権代理行為を
  追認したときは、Cは、A及びDに対し、貸金の返還を請求することがで
  きる。

オ Bが無権代理行為の追認を拒絶した後に死亡し、AがBを単独で相続した
  場合、Cは、Aに対し、貸金の返還を請求することができる。


司法書士 平成13年第3問 改題)


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今回は司法書士試験の過去問からの出題です。

「無権代理と相続」についての知識を問う問題です。

無権代理人が本人を相続する場合、本人が無権代理人を相続する場合の

それぞれの判例知識を正確に理解できているかどうかがポイントになります。

主要な判例については網羅されていますので、

本問を通してしっかり押さえてしまいましょう。


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【解答・解説】

ア○ 無権代理人が本人を相続し本人と代理人との資格が同一人に帰するに至っ
   た場合においては、本人が自ら法律行為をしたのと同様な法律上の地位
   を生じる(最判昭40.6.18)。つまり、無権代理人が本人を相続した場合
   には、無権代理行為は「当然に有効になる」ということである。
   よって、Aの無権代理行為は、本人Bの死亡により(相続により)当然
   に有効となるため、CはAに対し、貸金の返還を請求することができる。
   なお、Cには、Aに代理権がないことを知らなかったことに過失がある
   ので、表見代理(民法109条、110条、112条)は成立せず、また、無権代
   理人の責任(民法117条)も追及することはできない(以下、イからオに
   ついても同様である)。

イ× 本人が無権代理人を相続した場合は、無権代理行為の追認を拒絶しても
   何ら信義則に反しないから、無権代理行為は本人の相続により「当然に
   有効となるものではない」(最判昭37.4.20)。
   よって、Aの無権代理行為は、Aの死亡により(相続により)当然に有
   効とはならないため、CはBに対し、貸金の返還を請求することはでき
   ない。

ウ× 無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合においては、
   「他の共同相続人全員の追認がない限り」、無権代理行為は、
   「無権代理人の相続分に相当する部分においても」、当然に有効となる
   ものではない(最判平5.1.21)。
   つまり、共同相続人の中に一人でも追認をしない者がいる場合には、部
   分的にも有効となる余地はないということである。
   本問について見てみると、共同相続人であるDは無権代理行為の追認を
   拒絶している。よって、無権代理人の相続分に相当する部分についても、
   有効となる余地はない。したがって、CはAに対し、Aの相続分の限度
   であっても貸金の返還を請求することはできない。

エ○ 無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、他の
   共同相続人全員が無権代理行為の追認をしている場合には、無権代理人
   が追認を拒絶することは信義則上許されない(最判平5.1.21)。
   本問について見てみると、共同相続人であるDは無権代理行為の追認を
   している(他の共同相続人はDのみなので、他の共同相続人全員が追認
   をしているということである)。よって、Aの追認拒絶は許されず、A
   は追認することになるため、無権代理行為は契約時に遡って有効となる
   (民法116条本文)。したがって、貸金返還債務は、遡及的に生前のB
   に帰属し、相続によりA及びDに承継されることになり(民法896条本文)、
   結果として、Cは、A及びDに対し、貸金の返還を請求することができ
   ることになる。

オ× 本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、「その後に」無権代理
   人が本人を相続したとしても、無権代理行為は有効にはならない(最判
   平10.7.17)。追認拒絶によって無権代理行為の効果が本人に帰属しない
   ことが確定するが、相続が生じたことにより、この追認拒絶の効果が覆
   されるとするのは妥当ではないと考えられたためである。
   本問について見てみると、本人Bは追認を拒絶した「後に」死亡してい
   るため、無権代理行為は有効にはならない。したがって、Cは、Aに対し、
   貸金の返還を請求することはできない。

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2007年09月12日

第8号(9月8日配信分)

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  ★★ 民法が得意になる!過去問サクサク○×ドリル<第8号> ★★  

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民法総則 <代理>

【問題】

Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む。)についてBから代
理権を授与されている場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によ
れば、正しいものはどれか。

1 Aが、Bの名を示さずCと売買契約を締結した場合には、Cが、売主はB
  であることを知っていても、売買契約はAC間で成立する。

2 Aが、買主Dから虚偽の事実を告げられて売買契約をした場合でも、Bが
  その事情を知りつつAに対してDとの契約を指図したものであるときには、
  BからDに対する詐欺による取消はできない。

3 Aが、買主を探索中、台風によって破損した建物の一部を、Bに無断で第
  三者に修繕させた場合、Bには、修繕代金を負担する義務はない。

4 Aは、急病のためやむを得ない事情があっても、Bの承諾がなければ、さ
  らにEを代理人として選任しBの代理をさせることはできない。


宅建 平成13年第8問)


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今回は宅建の過去問からの出題です。

「本人のためにすることを示さない意思表示」、「代理行為の瑕疵」等

の代理に関する知識を問う問題です。

条文の文言がやや分かりにくいので、苦手な方の多い箇所です。

問題を通して理解を深めていきましょう。



===================================


【解答・解説】

1× 代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のた
   めにしたものとみなされる(民法100条本文)。ただし、相手方が、
   「代理人が本人のためにすること(=代理意思)」を知り(悪意)、
   又は知ることができたとき(善意有過失)は、本人に対して直接にその効
   力を生じる(同条但書、99条1項)。
   つまり、
   <代理人が本人のためにすることを示さないで意思表示をした場合>
    原則 代理人に効果帰属
    例外 相手方が代理人の代理意思について悪意又は善意有過失である
       とき
        →本人に効果帰属
   ということである。
   本問について見てみると、代理人であるAは本人Bの名を示していない
   ため、原則としてAに効果帰属するはずである。しかし、相手方Cは
   「売主はBである」ことを知っているわけであるから、代理人Aの代理
   意思について悪意であると言え、代理行為の効果は本人であるBに帰属
   する。したがって、売買契約はAC間ではなく、BC間で成立すること
   になる。

2○ 意思表示の効力が詐欺によって影響を受けるべき場合には、その事実の
   有無は、代理人について決するものとする(民法101条1項)。
   ただし、代理人が(1)「特定の法律行為をすることを委託された場合」
   において、代理人が(2)「本人の指図に従ってその行為をしたとき」は、
   本人は、(3)自ら知っていた事情(悪意)について(また、過失により
   知らなかった事情(善意有過失)についても)、代理人が知らなかった
   ことを主張することができない(民法101条2項)。
   つまり、
   <代理人が相手方の詐欺によって意思表示を行った場合>
    原則 当該意思表示は「詐欺による意思表示」と認定され、代理行為
       の効果帰属先である本人が当該意思表示について取消権を取得
       する(民法96条1項)。
    例外 代理人が
       (1)「特定の法律行為をすることを委託され」、
       (2)「本人の指図に従ってその行為をしたとき」、
       (3)「本人が詐欺につき悪意又は善意有過失である場合」には、
       「詐欺による意思表示」とは認定されず、本人は取消権を取得
       しない。
   ということである。
   本問について見てみると、Aは、B所有の建物の売却という「特定の法
   律行為」の代理権を授与され、「本人Bの指図により売買契約を行って
   いる」ため、(1)、(2)の要件は満たしている。
   また、本人Bは、Dが虚偽の事実を告げていることを知っている(悪意
   である)ため、(3)の要件も満たしている。
   したがって、(1)〜(3)の要件を満たすため、Aの意思表示は「詐欺に
   よる意思表示」とは認定されず、Bは取消権を取得しない。

3× 保存行為とは、財産の滅失・損壊を防ぎ、その現状を維持する行為をい
   う。よって、台風によって破損した建物の一部を修繕する行為も保存行
   為に当たる。
   本問のAは、B所有の建物の売却の代理権とともに、それに伴う保存行
   為の代理権も授与されている。したがって、第三者に修繕させた行為も、
   代理権の範囲内の行為であり、修繕契約(通常は請負契約)の効果は、
   本人であるBに帰属する(民法99条1項)。その結果、Bは修繕代金債
   務を負担することになる。

4× 委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由が
   あるときでなければ、復代理人を選任することができない(民法104条)。
   つまり、委任による代理人は、「本人の許諾を得たこと」、もしくは、
   「やむを得ない事由があること」のいずれか一方を満たした状況におい
   ては、復代理人を選任することができるということである。
   本問の代理人Aは、急病のため「やむを得ない事情」があるわけである
   から、本人Bの許諾がなくても、復代理人Eを選任することができる。

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 現在、大学・法律系専門学校において講師教材作成に従事している。


 

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2007年09月09日

第7号(9月5日配信分)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  ★★ 民法が得意になる!過去問サクサク○×ドリル<第7号> ★★  

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

民法総則 <代理>

【問題】

Aは、Bの代理人として、C所有の土地についてCと売買契約を締結したが、
その際次に掲げるような事情があった場合、民法の規定及び判例によれば、
誤っているものはどれか。

1 BがAに代理権を与えていなかった場合は、Cは、そのことについて善意
  無過失であり、かつ、Bの追認がないとき、Aに対して契約の履行の請求
  又は損害賠償の請求をすることができる。
  (なお、Bは行為能力者であり、Cは無権代理行為につき取消権を行使し
   ていないものとする。)

2 AがBに隠れて当該土地の売買についてCからも代理権を与えられていた
  場合は、当該契約は効力を生じない。

3 CがAをだまして売買契約を締結させた場合は、Aは当該売買契約を取り
  消すことができるが、Bは取り消すことができない。

4 BがAに代理権を与えていなかった場合は、Cは、そのことについて善意
  であり、かつ、Bの追認がないとき、当該売買契約を取り消すことができ
  る。


宅建 平成2年第5問 改題)


===================================


今回は宅建の過去問からの出題です。

双方代理、無権代理人の責任等の代理に関する基本的な知識を問う問題です。

条文を正確に把握できているかどうかがポイントになります。

なお、肢1については、疑義がある問題文となっておりましたので、

改題させていただきました。


===================================


【解答・解説】

1○ 他人の代理人として契約をした者は、(1)「自己の代理権を証明するこ
   とができず」、かつ、(2)「本人の追認を得ることができなかったとき」
   は、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う
   (民法117条1項)。つまり、(1)、(2)の要件を満たせば、無権代理行
   為の相手方は、無権代理人に対して履行の請求又は損害賠償の請求をする
   ことができるということである。ただし、民法は、(3)「他人の代理人と
   して契約をした者(=無権代理人)が代理権を有しないことを相手方が知
   っていたとき(悪意)若しくは過失によって知らなかったとき(善意有過
   失)」、又は(4)「他人の代理人として契約をした者(=無権代理人)が
   行為能力を有しなかったとき」は、無権代理人はその責任を負わないと規
   定している(同条2項)。
   以上をまとめると、相手方は、無権代理人に対して次の要件を満たした場
   合に、履行の請求又は損害賠償の請求をすることができることになる。
    (1)「無権代理人が自己の代理権を証明することができないこと」
    (2)「本人の追認を得ることができないこと」
    (3)「相手方が無権代理であることについて悪意又は有過失でないこと
      (=善意無過失であること)」
    (4)「無権代理人が行為能力を有すること」
   さらに、明文の規定はないが、無権代理行為を相手方が取消した場合にも
   (民法115条)、相手方は請求することができないと解されている(通説)。
   無権代理行為の取消しは、法律関係をゼロにする趣旨であるため、取消後
   に履行の請求等を認めるのは不当だからである。よって、次が5つ目の要
   件となる。
    (5)「相手方が無権代理行為の取消しをしていないこと」
   本問について見てみると、AはBから代理権を与えられておらず、かつ、
   Bの追認もないため、(1)、(2)の要件は具備されている。
   また、Aは行為能力者であるため、(4)も満たしている。
   さらに、Cは無権代理について善意無過失であり、かつ、取消権も行使し
   ていないため、(3)、(5) も満たしている。
   以上より、(1)〜(5)の要件を全て満たすため、CはAに対して契約の履
   行の請求又は損害賠償の請求をすることができる。

2○ 同一の法律行為については、当事者双方の代理人となることはできない
   (民法108条本文)。これに違反する場合は、無権代理行為となり、無効
   である。
   本問について見てみると、AはB、Cそれぞれから代理権を与えられ、
   売買契約を行っている。よって、当該契約は無権代理行為として無効とな
   る。

3× 意思表示の効力が詐欺によって影響を受けるべき場合には、その事実の有
   無は、代理人について決するものとする(民法101条1項)。代理行為の
   行為主体は代理人である(代理人行為説:通説)ため、当然の規定とも言
   える。この規定により、代理人が相手方の詐欺によって意思表示を行った
   場合には、当該意思表示は「詐欺による意思表示」と認定され、代理行為
   の効果帰属先である本人が当該意思表示についての取消権を取得する
   (民法96条1項)。一方、代理人は、取消権についての代理権を付与され
   ない限り、取消権を有しない。
   したがって、本人であるBは取消権を有するが、代理人であるAについて
   は取消権の代理権を付与されたという事実が認定できないため、取り消す
   ことができるかどうかは不明である。

4○ 代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取
   り消すことができる(民法115条本文)。ただし、契約の時において代理
   権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない(同条但
   書)。つまり、契約時において代理人が無権限であることについて
   (1)「善意」であれば、(2)「本人が追認をするまでの間」は、取り
   消すことができるということである。
   本問のCは代理人の無権限について「善意」であり、また、Bも追認をし
   ていないため、 (1)、(2)の要件は満たしている。よって、Cは売買契約
   を取り消すことができる。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

お疲れ様でした。

今後も良問を厳選し、お届けいたします。

本解説では、最短ルートで解答を導くプロセスを記載していますので、

自然と無駄なくスピーディに解答するテクニックが養われます。

ともに頑張っていきましょう。


□お詫び□

本号は9月1日(土曜日)に配信する予定でおりましたが、

予約の手違いにより、配信することができませんでした。

ご迷惑をおかけいたしましたことを、お詫び申し上げます。


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第6号(8月29日配信分)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  ★★ 民法が得意になる!過去問サクサク○×ドリル<第6号> ★★  

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

民法総則 <代理>

【問題】

Aは、何らの権限もないのに、Bの代理人と称して、Cとの間にB所有の不動
産を売り渡す契約を締結した。この場合におけるBの追認に関する次の記述の
うち、正しいもの(2つ)はどれか。

ア CがBに対して相当の期間内にAの行為につき追認をするか否かを確答す
  べき旨の催告をした場合において、Bがその期間内に確答しなかったとき
  は、Bは追認をしたものとみなされる。

イ AC間の売買の合意が錯誤によって無効であるときは、BはAの無権代理
  行為を追認することができない。

ウ BがAに対して追認をする意思表示をした場合において、Cがこれを知ら
  なかったときは、Cは、Aに対して、無権代理行為を取り消すことができ
  る。
  (なお、CはAC間の売買の合意がされた時にAの無権限を知らなかった
  ものとする。)

エ AC間の売買の合意がされた時にAの無権限を知らなかったCがこれを取
  り消した後においては、Bは追認をすることができない。

オ BがCに対して追認をする意思表示をした場合において、契約の効力が発
  生する時期について別段の意思表示がされなかったときは、契約の効力は、
  追認をした時から生じる。


司法書士 平成7年第4問 改題)


===================================


今回は司法書士試験の過去問からの出題です。

無権代理行為があった場合の催告権・取消権・追認権に関する知識を問う問題

です。

催告・取消し・追認を行うことができる場合と、それを行った場合の効果を

正確に把握できているかどうかがポイントになります。

なお、肢ウについては、疑義がある問題文となっておりましたので、

改題させていただきました。


===================================


【解答・解説】

ア× 無権代理の相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に
   追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる(民法114
   条前段)。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、
   追認を拒絶したものとみなす(同条後段)。よって、本問のBは、追認
   をしたものとみなされるのではなく、追認を拒絶したものみなされる。

イ× 代理権を有しない者が、他人の代理人としてした契約は、「本人がその
   追認をしなければ、」本人に対してその効力を生じない(民法113条1
   項)。つまり、本人が追認をすれば、本人に対して効力が及ぶというこ
   とである。このように、無権代理行為の追認とは、本人に効果を帰属さ
   せるものであり、いわば、無権代理行為を有権代理行為とするものであ
   る。契約が無効であるかどうかは、追認した後の問題であり、契約が無
   効であることによって、追認自体が妨げられることはない。

ウ○ 代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が
   取り消すことができる(民法115条本文)。ただし、契約の時において代
   理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない(同
   条但書)。つまり、契約時において代理人が無権限であることについて
   (1)「善意」であれば、(2)「本人が追認をするまでの間」は、取
   り消すことができるということである。
   本問のCは、AC間の売買の合意がされた時にAの無権限を知らなかっ
   たわけであるから、(1)の要件は満たしている。問題は(2)「本人
   が追認するまでの間」と言えるかどうかである。
   追認は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができ
   ない(民法113条2項本文)。ただし、相手方がその事実を知ったときは、
   この限りでない(同条2項但書)。つまり、代理人に対して追認をした
   場合には、相手方がその事実を知った場合に限り、相手方に対抗するこ
   とができるということである。本問において、BはAに対して追認をす
   る意思表示をしているが、相手方であるCがこれを認識していない。
   よって、Bは追認の効果をCに対抗することができない。
   したがって、Cの立場からすると、(2)「本人が追認をするまでの間」
   と言えるので、CはAに対して無権代理行為を取り消すことができるこ
   とになる。

エ○ 無権代理行為の取消しとは、無権代理行為を将来に向かって「確定的に」
   無効にする一種の撤回である(通説)。よって、取消後においては、無
   権代理行為は「確定的に」無効となっているため、追認をする余地はな
   い。本問の場合、Cが無権代理行為を取り消した後であるため、Bは追
   認をすることができない。

オ× 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効
   力を生ずる(民法116条本文)。追認をした時から生じるわけではない。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

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2007年09月06日

第5号(8月25日配信分)

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  ★★ 民法が得意になる!過去問サクサク○×ドリル<第5号> ★★  

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

民法総則 <代理>

【問題】

Aが、Bに代理権を授与してA所有の土地を売却する場合に関する
次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1Bが未成年者であるとき、Bは、Aの代理人になることができない。

2Bは、自己の責任により、自由に復代理人を選任することができる。

3Bは、Aの同意がなければ、この土地の買主になることができない。

4Bは、Aが死亡した後でも、Aの代理人としてこの土地を売却できる。


宅建 平成12年第1問より抜粋)


===================================


今回は宅建の過去問からの出題です。

代理に関する知識を問う問題です。

基本的な条文をしっかりと押さえられているかどうかが

ポイントになります。


===================================


【解答・解説】

1× 代理人は行為能力者であることを要しない(民法102条)。よって、Bは
   未成年者であっても、Aの代理人になることができる。

2× 委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由が
   あるときでなければ、復代理人を選任することができない(民法104条)。
   本問のBはAから代理権の授与を受けて代理人となっているため、委任
   による代理人に当たる。よって、Bは自由に復代理人を選任することは
   できない。

3○ 同一の法律行為については、原則として、相手方の代理人となることは
   できない(民法108条本文)。
   →つまり、売買契約であれば、「買主(又は売主)」≠「売主(又は買
    主)の代理人」ということである。
   ただし、例外的に、(1)「債務の履行」及び(2)「本人があらかじ
   め許諾した行為」については、相手方の代理人となることも認められて
   いる(同条但書)。
   →つまり、(1)又は(2)の場合には、「買主(又は売主)」=「売
    主(又は買主)の代理人」も認められるということである。
   本問について見てみると、Bは「売主の代理人」である。よって、(1)
   又は(2)に該当する場合でなければ、「買主」にはなれない。売買契
   約を締結することは、(1)「債務の履行」ではないため、(2)本人
   であるAの同意がない限り、Bは買主になることはできない。

4× 代理権は本人の死亡により消滅する(民法111条1項1号)。よって、
   Bは、Aが死亡した後は、Aの代理人として売買契約を行うことはでき
   ない。


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第4号(8月22日配信分)

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  ★★ 民法が得意になる!過去問サクサク○×ドリル<第4号> ★★  

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民法総則 <意思表示>

【問題】

Aが、その所有地について、債権者Bの差押えを免れるため、Cと通謀して、
登記名義をCに移転したところ、Cは、その土地をDに譲渡した。この場合、
民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

1AC間の契約は無効であるから、Aは、Dが善意であっても、Dに対し所
 有権を主張することができる。

2Dが善意であっても、Bが善意であれば、Bは、Dに対し売買契約の無効
 を主張することができる。

3Dが善意であっても、Dが所有権移転の登記をしていないときは、Aは、
 Dに対し所有権を主張することができる。

4Dがその土地をEに譲渡した場合、Eは、Dの善意悪意にかかわらず、
 Eが善意であれば、Aに対し所有権を主張することができる。


宅建 平成5年第3問より抜粋)


===================================


今回は宅建の過去問からの出題です。

虚偽表示の無効について問う問題です。

「善意の第三者」に該当する者を正確に把握しているかどうか

ポイントになります。


===================================


【解答・解説】

1× Aは差押えを免れるため、Cと通謀して所有権を移転する旨の仮装の
   契約を行っている。つまり、所有権を移転させる意思がないにもかか
   わらず、Cと通じてCに対し申込み(又は承諾)の意思表示を行って
   いるわけであるから、Aの意思表示は虚偽表示であり、無効となる
   (民法94条1項)。
   ただし、虚偽表示の無効は、「善意」の第三者には対抗することがで
   きない(同条2項)。ここでの第三者とは、当事者及びその包括承継
   人以外の者で、虚偽表示による法律行為の存在を前提として、新たに
   法律上の利害関係を有するに至った者をいう(大判大9.7.23)。本問
   のDは、虚偽表示につき「善意」であり、かつ、Cが所有権者である
   ということを前提にCから土地を譲り受けているため、この「善意」
   の第三者にあたる。よって、Aは、Dに対し虚偽表示の無効を主張す
   ることができず、結果として所有権を主張することができないことに
   なる。

2× 無効は、錯誤の場合を除き(最判昭40.9.10参照)、誰でも主張するこ
   とができる。よって、本問のBについても、その善意悪意に関係なく、
   Aの意思表示の無効を主張することは可能である。ただし、虚偽表示
   の無効は、善意の第三者に対しては主張することができない(民法
   94条2項)。したがって、Bは、善意であるDに対し虚偽表示の無効
   (結果として契約の無効)を主張することができない。

3× 虚偽表示の無効は善意の第三者に対抗することができない(民法94条
   2項)。判例は、この第三者について、登記を具備することまで要求
   していない(最判昭44.5.27参照)。よって、本問のDは、所有権移転
   登記を具備していないが、この第三者にあたる。したがって、肢1と
   同様、Aは、Dに対し虚偽表示の無効を主張することができず、結果
   として所有権を主張することができないことになる。

4○ 虚偽表示の無効は善意の第三者に対抗することができない(民法94条
   2項)。この「第三者」には、第三者からさらに目的物を取得した者
   (転得者)も含まれる(最判昭45.7.24)。そこで、Dから土地を譲り
   受けたEも、この第三者にあたる。よって、Aは、Eに対し虚偽表示
   の無効を主張することができない。したがって、Eから見ると、所有
   権はA→C→D→Eと移転したことになり、結果としてEはAに対し
   て所有権を主張することができることになる。


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第3号(8月18日配信分)

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  ★★ 民法が得意になる!過去問サクサク○×ドリル<第3号> ★★  

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民法総則 <意思表示>

【問題】

A所有の土地について、AがBに、BがCに売り渡し、AからBへ、Bから
Cへそれぞれ所有権移転登記がなされた場合に関する次の記述のうち、民法
の規定によれば、正しいものはどれか。

1Cが移転登記を受ける際に、AB間の売買契約がBの詐欺に基づくもので
 あることを知らなかった場合で、当該登記の後にAによりAB間の売買契
 約が取り消されたとき、Cは、Aに対して土地の所有権の取得を対抗でき
 る。

2Cが移転登記を受ける際に、AB間の売買契約が公序良俗に反し無効であ
 ることを知らなかった場合、Cは、Aに対して土地の所有権の取得を対抗
 できる。

3Cが移転登記を受ける際に、AB間の売買契約に解除原因が生じているこ
 とを知っていた場合で、当該登記の後にAによりAB間の売買の売買契約
 が解除されたとき、Cは、Aに対して土地の所有権の取得を対抗できない。

4CがBと売買契約を締結する際に、既にAによりAB間の売買契約が解除
 されていることを知っていた場合、Cは、Aに対して土地の所有権の取得
 を対抗できない。

宅建 平成8年第5問より抜粋 肢4につき改題)


===================================


今回は宅建の過去問からの出題です。

無効・取消・解除のそれぞれの場合において、転得者が売主に対して所有権

の取得を対抗できるかどうかを問う問題です。

取消前・取消後の第三者、解除前・解除後の第三者との関係をしっかり押さ

えられているかどうかがポイントになります。

なお、肢4については、若干疑義がある問題文となっておりましたので、

改題させていただきました。


===================================


【解答・解説】

1○ 詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができ
   ない(民法96条3項)。ここでの第三者とは、当事者及びその包括承
   継人以外の者で、詐欺による意思表示によって生じた法律関係を前提
   として、取消前に、新たに法律上の利害関係を有するに至った者をい
   う(大判昭17.9.30参照)。本問のCは、AB間の売買契約がBの詐
   欺に基づくものであることを知らずに(つまり善意で)取消前に譲渡
   を受けているため、この第三者に当たる。よって、Aは、取消しの効
   果をCに対抗することができないため、Cから見ると、所有権は
   A→B→Cと移転したことになる。その結果、CはAに対して所有権
   の取得を対抗することができることになる。
   なお、AとCは、対抗関係ではないため(A→B→Cという所有権の
   前主と後主の関係でありCから見てAは民法177条の第三者には当た
   らない[最判昭43.11.19])、仮にC名義の所有権移転登記を具備し
   ていなくても、結論に変わりはない。

2× 公序良俗に反する法律行為は、無効である(民法90条)。無効は、虚
   偽表示等の場合を除き(民法94条2項参照)、誰に対してでも(無効
   につき善意の第三者に対してでも)主張することができる。よって、
   本問のAも、善意のCに対してその無効を主張することができる。し
   たがって、CはAに対して土地の所有権の取得を対抗することができ
   ない。
   なお、A→B→Cと所有権移転登記がされているが、登記に公信力が
   ない以上、Cは所有権を取得することはなく、結論に変わりはない
   (表見法理の要件を具備すれば、Cが所有権を取得する可能性もある
   が[民法94条2項類推適用:最判昭45.9.22等参照])、本問では、そ
   の要件具備を確認することはできないため、考慮する必要はないと思
   われる)。

3× 解除権を行使したときは、契約は遡及的に消滅する (最判昭34.9.22
   参照:直接効果説)。そのため、契約の解除により売買契約によって
   移転した所有権も当然に原所有者に復帰することになる。しかし、
   これでは、解除前に所有権を転得した第三者も所有権を失うことと
   なり妥当ではない。そこで、民法は、解除の遡及効を制限し、解除前
   の「第三者の権利を害することはできない」と規定している(民法
   545条1項但書)。
   つまり、解除前の第三者に対しては、解除の効果を主張できないとい
   うことである。なお、判例は、この第三者が保護を受けるためには、
   その権利につき対抗要件(登記)を備えることを要するとしている
   (最判昭33.6.14)。
   本問について見てみると、Cは、解除前に所有権を取得しており、か
   つ、所有権移転登記も具備している。よって、AはCに対して解除の
   効果を対抗することはできないため、Cから見ると、所有権は
   A→B→Cと移転したことになる。その結果、CはAに対して所有権
   の取得を対抗することができることになる。
   なお、判例は、保護の対象となる第三者について、「善意」であるこ
   とまでは要求していないため、本問のCは悪意であるが、結論に変わ
   りはない。

4× 売買契約を解除し、売主に所有権が復帰した場合、売主は所有権移転
   登記を抹消しなければ(自己名義の登記を具備しなければ)、解除後
   に買主から所有権を取得した第三者に対して、所有権を対抗できない
   (最判昭35.11.29)。つまり、売主と転得者は、「売主←買主→転得者」
   という二重譲渡の場合と同様に、民法177条の対抗関係になるというこ
   とである。
   本問について見てみると、Cは解除後にBと売買契約を締結している
   ため、AとCは二重譲渡と同様の対抗関係となる。よって、先に登記
   を具備したCが優先するため、CはAに対して所有権の取得を対抗す
   ることができる。
   なお、民法177条の対抗問題ではそれぞれの善意・悪意は問題となら
   ないため(大判明38.10.20)、本問のCは悪意であるが、結論に変わ
   りはない。


以上より、正解は1である。


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お疲れ様でした。

今後も良問を厳選し、お届けいたします。

本解説では、最短ルートで解答を導くプロセスを記載していますので、

自然と無駄なくスピーディに解答するテクニックが養われます。

ともに頑張っていきましょう。

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【発行者略歴】
 宅地建物取引主任者資格試験合格
 司法書士試験合格
 現在、大学・法律系専門学校において講師教材作成に従事している。


 

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民法が得意になる!過去問サクサク○×ドリル 
発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/
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